教育プログラムの戦略的再構成の始動
筑波大学に世界遺産学専攻が設立されてから17年の歳月が経過し,開設当初の建築学を中核とする教育編成プログラムから,芸術史,ランドスケープ,文化的景観,保存科学,観光学,国際行政,自然遺産,環境ツーリズム,人文地理学,環境生態学へと領域を広げてきました。対象は文化遺産・自然遺産とおおまかに区分することができますが,学生の需要や時代の要請を背景に,当初の”taught degree”(単位を取得することにより学位を取得可能な教育プログラム)から,より“research degree“(学術的専門性を高めるための研究を基盤とする教育プログラム)を意識したプログラムへと変化しつつあります。
その際に,工学系を主体としつつ,多専門領域から成る「世界遺産学」という学術領域を再考するため,「国際遺産学分野」「遺産の評価と保存分野」「遺産のマネジメントとプランニング分野」の各分野から池田真利子・上北恭史・松井敏也の1名ずつ,計3名を中核として,既存の学域を超越した研究指向型の大学院教育プログラム開発を,2020年度夏季より試験的に行っています。
研究指向型大学院教育プログラム開発例
Global Learning: Heritage, Creativity and Art(グローバルに学ぶヘリテージ,創造性とアート)
本科目は,「Creativity and Art(創造性とアート)」をキーワードとし,ヘリテージ学に関わる文理横断的,かつ国際的な学術・学際的研究視点を日本語・外国語の別なく学ぶことです。そこで,演習「Designing Heritage Research」のテーマと関連付け,各年の学生/教員の関心や時流に合ったテーマを設定し,当該テーマに関する研究視点や事例,モデル等を学生と議論しながらハイブリッド式で解説していきます。2021年度は,ヘリテージ学の時流である「活用」に焦点を当て,以下の方々を話者として迎えているほか,BTU(ドイツ)の方をライブ・オンラインでお招きし,”Global Heritage Studies”の新潮流を考究しています。
①池田真利子(人文地理学) ヨーロッパでは全てがヘリテージ!欧米の都市文化と創造性
②上北恭史(建築計画学) ドイツの産業遺産の活用事例
③松井敏也(保存科学) 全ては数式化できる!科学的思考トレーニング
④北原格先生(知能情報学) 「技術」とメディア,仮想空間デザイン―プロジェクションマッピングと自由視点映像
⑤渡和由先生(デザイン学) プレイスメイキングとデザイン―空間を自由にデザインし視覚的に提案する
(⑥~⑨の話者は近日公開予定)
Global Project: Designing Heritage Research(グローバルに考究するヘリテージ研究デザイン)(近日公開)
教育戦略プロジェクト
この新教育プログラムは,筑波大学教育推進部・教学デザイン室が実施の「教育戦略推進プロジェクト」において「国際大学連携に基づく英語オンライン教育研究コンテンツの創造と運用モデルの構築」プロジェクトとして支援を受けています。とりわけ,世界の教育機関がオンライン化した今を「契機」と捉え,ライブで世界の大学と繋ぐ本プロジェクトは,以下を教育目的として設定しています。
[目的①]グローバル教育力の養成
COVID-19によりオンライン授業基盤が世界的に整備されつつある今,ICTを利活用した研究指向型オンライン遺産学教育コンテンツを海外大学機関と共同開発する。また大学院生にオンライン教材設計・開発に携わってもらうことにより,国際的に通用する教育リテラシーを習得してもらう。
[目的②]グローバル研究力の養成
COVID-19に起因し地域のための遺産の役割が高まる今,海外の遺産サイト-海外大学-筑波大学を接続することで,世界最先端の鮮度の高い,生きた情報コンテンツに触れる機会を設け,大学院生のグローバルな課題と解決に向けた主体性と研究力を国際的に育成する。
[目的③]グローバル展開力の養成
COVID-19を原因とし,国境や言語の障壁を超えてオンラインキャンパスを整備できる今,遺産学の学際性と専門性を活かし,世界の著名研究者にオンライン講義を依頼し,社会人向け講座開設を想定したアウトリーチ力とレジビリティの高い授業コンテンツを開発する。
海外オンライン教育連携大学
(近日公開)
ブランデンブルク工科大学コトブス=ゼンフテンベルク校(ドイツ)
シェフィールド大学/レスター大学(2020年度)(イギリス)
ユトレヒト大学(オランダ)