「世界遺産論」現地見学報告(大谷資料館および世界遺産「日光の社寺」)/ Visit to Oya History Museum and UNESCO World Heritage Site “Shrines and Temples of Nikko”
5月22日、「世界遺産論」の課外授業として、大谷資料館および世界遺産「日光の社寺」に関わる施設を訪れました。今回は見学の様子をご紹介します。
当日は早朝から雨が降り、寒い天気のなか、つくば駅に集合してバスに乗り込み、約2時間半をかけて最初の目的地である大谷資料館へと向かいました。
大谷資料館の訪問

大谷資料館の内部

大谷資料館の展示室。「大谷石の建造物」を紹介するパネルとともに、徳利や急須などの生活道具、採掘に使われた搬送具や工具類も見られます。
最初の訪問先として、栃木県宇都宮市の大谷資料館を訪問しました。
「坑内入り口」の道しるべに沿って進むと、外気よりもさらに冷んやりとした地下の展示場が目の前に現れました。この地下空間は、1919年(大正8年)から1986年(昭和61年)にかけての約70年間、大谷石の採掘によって形成された巨大な坑内跡です。階段を下りながら、大谷石の特徴や地層の構成、時代とともに変化した採掘方法などを順に見学しました。坑内の気温は年間を通して8°C 前後に保たれており、大谷石の採掘で利用されていた坑内は、戦時中には地下工場、戦後には政府米貯蔵庫として活用された歴史も持っています。そして採掘場や貯蔵庫としてのとしての役割を終えた現在は、コンサートや美術展、映画・写真のスタジオなど、多目的な文化空間として広く利用されています。隣接する資料室では採掘の作業環境、使われた搬送道具などが展示され、現地の生活の一端を垣間見ることができました。
大谷資料館の見学を終えた後、日光へ移動し、各自昼食をとってから日光東照宮へと向かいました。

日光東照宮の眠り猫。伝説の彫刻職人左甚五郎の作と伝わる作品です。猫が眠ることで裏にいる雀も安心して暮らせる姿は、戦乱の世が終わり平和が訪れたことの象徴とされます。
日光東照宮
自由見学時間に訪れた日光東照宮は、元和3年(1617年)に徳川家康公を祀るために創建された神社です。日本の代表的な神社建築様式「権現造」の完成形とされ、8棟が国宝、34棟が重要文化財に指定されており、1999年には世界文化遺産に登録されました。
境内の建物には漆、極彩色、彫刻が施されています。これらは単なる装飾ではなく、信仰や思想を視覚的に表現したものでした。なかでも神厩舎の「三猿」や奥社の「眠り猫」といった動物彫刻は広く知られており、それぞれ人生の教えや縁起、平和を象徴する意味が込められると言われています。
自由見学の時間はあっという間に過ぎ、次の目的地である輪王寺へと移動しました。
輪王寺・修理現場見学
公益財団法人日光社寺文化財保存会の技師長・原田正彦氏の案内のもと、輪王寺の大猷院、護法天堂の修理現場などを見学しました。輪王寺は東照宮、二荒山神社と並び「日光山」と呼ばれた寺院であり、境内には複数の重要な建築物が並びます。

漆及び彩色作業棟にて。職人の方々から丁寧な解説をいただきました。漆や顔料の産地、原料から製作工程、保存修理の仕上げに至るまでの流れを学ぶ貴重な機会となりました。
事前学習で学んだ「日光の社寺」の世界遺産としての歴史的、文化的価値がどのように現場で再現されているのかはもちろん、文化財保存の要としての保護方針が「現状維持」ではなく「原状復元」を方針とする保存活動の現場を直接観察することで、現在進行中の文化財修理事業の実態を具体的に把握することができました。
見学の最後に、漆および彩色の作業棟を訪れました。職人の方々による丁寧な解説を通じて、漆や顔料の産地、原料、製作工程から、保存作業の仕上げに至るまでの流れを学びました。伝統技法が文化財保存をどのように支えているか、また材料の調達や修復手法に関する理解も深まり、実りある見学となりました。
今回の見学を通じて、世界遺産の価値は建築や歴史だけでなく、それを守り続ける人々の技術と努力によって支えられていることを改めて実感しました。

世界遺産プログラムの学生及び教員と、ご解説を担当いただいた公益財団法人日光社寺文化財保存会技師長の原田正彦氏との集合写真です。
(M1 程)
