「プランニング演習」報告
2025年9月9日~11日に、白川郷・五箇山地域でプランニング演習を行いました。事前に文献調査とGIS調査によって現地の特徴を把握したうえで現地演習に臨みました。現地演習後は2つのグループに分かれ、当該地域を対象にした観光計画案を考えて計5回の発表を行い、その結果を報告書にまとめました。
この報告では、9月の現地演習の様子と、その後の発表の様子をご紹介します。
9月9日
富山駅に集合し、車で相倉集落へ行きました。展望台からは美しい合掌集落の景色を見ることができました(写真1)。

写真1 相倉集落の展望台からの眺め
当日持参した事前課題では、各自対象地を決めて被視頻度(見られ頻度)を調べていたため、相倉集落の展望台を対象にした学生は実際の見え方と課題の結果を比較することができました。その後は自由時間となり、各自相倉集落を散策し、展示施設を見学しました。
相倉集落の見学後は、白山信仰が伝わる白山宮、茅葺の鐘楼堂が残る圓浄寺、再現された流刑小屋、現存最古級の合掌造りである羽馬家などを見学し、夜は合掌造りの民宿 弥次兵衛に宿泊しました。

写真2 カラオケができる飲食店
9月10日
まず小原地区の民謡の里を訪れました。五箇山地域は民謡発祥の地と言われています。実際に「五箇山民謡発祥の地」の碑の隣にはカラオケができる飲食店があり(写真2)、歴史を現代の方法で追体験できるような合掌造り建物の活用が印象に残りました。
しかし、民謡公園では民謡を流すことができるボタンがあるのみで(写真3)、民謡に関して学びを得られるような展示はありませんでした。人が集まっている様子もありません。これについて、先生が仰っていた「山深いエリアに公園をつくる意味を、誰にどのように使ってもらいたいかも含めて事前の計画で明確に示す必要がある」という言葉が強く印象に残りました。確かに、目的が不明確であるためにせっかく造った公園が放置されてしまうのは勿体ないと感じました。
また、付近の森林では、戦後復興期から高度経済成長期にかけ木材需要の拡大に応じて植林されたスギが管理できず放置されている姿も目にしました(写真4)。現在同様の問題は全国で起きていますが、地域の林業振興センターなどが機能し有効な活用が行われることが望ましいと感じました。
その後、菅沼集落に移動し、合掌造り集落を見学しました。相倉集落に比べて小さな集落ですが、その中に野菜や花を育てている農地や水路、人工池が集まっており、他の集落よりも生活感を感じました。
菅沼集落の後は、岩瀬家を訪れました。国内最大規模の合掌造り家屋で、3~5階は養蚕に使われていたそうです。実際に養蚕の道具や民具が展示されていました。また、スタッフの方が「こきりこ」と「ささら」という楽器を使って五箇山民謡を披露してくださり、その迫力に驚きました。実際にささらを体験させていただくこともできました(写真5)。
さらに、茅葺屋根の葺き替えについてお話を伺うことができました。岩瀬家では25年に1回葺き替えが行われ、片面3000万円の費用と2ヶ月の期間を要することに驚きました。合掌造り家屋を維持することの大変さを知りました。
その後、白川郷荻町を訪れ、自由行動で景色の見え方を実際に確かめました。夜は空き家を改修し教育施設として活用されている、合掌造りの旧花植家に宿泊しました。

写真3 民謡公園の入り口にある、民謡を流せるボタン

写真4 放置されたスギ林

写真5 ささら体験
9月11日
白川郷の南方に位置する平瀬温泉地域を訪れました。
温泉地で宿泊施設が集まっている地域ですが、人通りが少なく、活気があまり感じられませんでした(写真6)。

写真6 平瀬温泉地域
平瀬温泉地域には、遠くから汲みに来る人もいるという美味しい湧水があります(写真7)。これは保水性のあるブナ林で徐々にろ過されて下に集まってきた水なのだそうです。勢いよく流れ続けていましたが、スギ林や竹林であったらこのような状態にはなりません。先生から、日本中で竹林化が進み、地下茎が横に広がって土砂災害が起きやすくなっているという問題についても伺うことができ、ブナ林の役割の重要性を知ることができました。その後、さらに南に移動し旧遠山家民俗資料館を訪れました(写真8)。遠山家は焔硝産業や養蚕業を担い、明治時代中期には40人以上が住んだ「大家族」制の家でした。館内では当時の様子を映したビデオが上映されていたことが印象的でした。
旧遠山家では、「遠山家ごはんプロジェクト」という取り組みが行われており、近隣の飲食店で作られたお弁当を、実際の大家族制を体験するように食べることができます(写真9)。今回は、料理宿 御母衣のお弁当を頂きました。とても美味しかったです。また、脚付き膳を前に慣れない正座で食べることで少し緊張感もありました。

写真7 湧水(霧立ちの水)

写真8 旧遠山家民俗資料館

写真9 遠山家ごはんプロジェクトの体験
観光計画作成とグループ発表
大学に戻ってから、各自の関心をもとに2つのグループに分かれ、観光計画の作成に取り組みました。
1つ目のグループは、「白川郷八景 合掌造りだけじゃない!四季を彩る白川郷の風景」というテーマで、白川郷で自然資源が活用できていない現状や観光客の滞在時間の短さ、リピーターの少なさに課題を見出して計画を考えました。「自然」「歴史」「文化」のつながりが分かる場所として季節ごとの八景を選定し、体験も組み込んだルートマップの作成で周遊性の向上を目指しました(写真10)。
2つ目のグループは、平瀬温泉地域が白川郷の近くにあるにもかかわらず宿泊地として十分に利用されていない実態を踏まえ、「平瀬温泉を魅力的な宿泊地へ」というテーマで計画を考えました。住民主体の施策を意識しながら、夜を明るくするための常設灯の設置や和紙ランプづくり体験、夏季の屋台イベントや冬季の郷土料理「すったて鍋」の体験・販売イベントを計画しました(写真11)。

写真10 グループ1の発表の様子

写真11 グループ2の発表の様子
以上の計画を報告書にまとめ、1月末に提出しました。
グループで方向性を調整しながら一つの計画を作るのは難しかったですが、毎回の発表で先生・TAやもう一つのグループのメンバーに頂いたアドバイスを反映させながら取り組み、とても良い経験になりました。観光計画を策定する仕事の大変さを垣間見ることができたような貴重な機会でした。
(M1 瀧田)
