旧岩崎家末廣別邸に行ってきました     [2020年9月30日]

今回,松井敏也先生の保存科学調査の一環として,旧岩崎家末廣別邸に行ってきました。千葉県富里市にある旧岩崎家末廣別邸は,三菱財閥の創業者・岩崎彌太郎の息子で三菱財閥三代目総帥の三菱久彌の別邸です。旧岩崎家末廣別邸は末廣農場内に建てられました。末廣農場とは,岩崎家が所有していた農場で,かつては340ha(東京ドーム約73個分)もの広大な面積を有し,養鶏・養豚などが行われていました。大正元年(1912年)に開場した末廣農場では,当時の最新設備や機械を導入した先進的な農法が行われ,数多くの研究が実践されるなど,実験的な農場だったと言われています。

土地と建物は現在,富里市が管理しており,一般には公開されていません。また,別邸の主屋・東屋・石蔵は国の登録有形登録文化財になっています。

今回は,敷地内の庭園の樹木の伐採にあたり,伐採前の庭園の様子を記録するため,3Dスキャナーを使用し,撮影を行いました。約10m間隔で撮影地点を設定し,敷地の入り口から別邸の玄関へとつづく道を撮影します。およそ2時間で作業は終了しました。

庭園内部は,樹木が生い茂り,庭というよりは自然の森の中にいるような雰囲気が感じられました。

また,作業前に主屋内部の見学もさせていただき,玄関・御座敷・台所・浴室・寝室などを見せていただきました。建物の建築年は大正末〜昭和初期と考えられています。当時としてはまだ珍しい洋式の便座や,使用人を呼ぶための呼び出し装置など,当時の生活の様子がわかる貴重な建造物です。台所の細部に使用人に対する配慮が窺えるなど,岩崎久彌の人柄を垣間見ることができます。

現在,旧岩崎家末廣別邸は,一般公開に向けて準備が進められているそうです。文化財の活用に向けた取り組みについてのお話を,市の文化財職員の方に聞かせていただくなど,今回の調査を通じて多くのことを学ばせていただき,大変貴重な経験となりました。

[Comments by a student Y, in the field practice of Prof. Matsui lab]